注文住宅を建てる時は、どこの会社に建ててもらうかが住宅の満足度に大きく影響します。
依頼先としては、ハウスメーカーや工務店、設計事務所などが考えられますが、どこを選ぶのが一番良いのでしょうか?
今回は、それぞれの長所や短所を比較しながら、注文住宅の依頼先について考えていきます。
注文住宅の依頼先
注文住宅を依頼できる会社は大きく分けて三つあります。
一つ目はハウスメーカーです。
ハウスメーカーと工務店を区別するのに明確な基準はありませんが、比較的規模が大きく、全国的、もしくは複数の地域に渡って展開している会社をハウスメーカーと呼ぶ場合が多いです。
テレビCMなどの広告や、住宅展示場への出展を積極的に行っており、知名度も高いです。
注文住宅の依頼先と言えば、大手ハウスメーカーを連想する人が多いです。
二つ目は工務店です。
一口に工務店と呼ばれているものでも、準ハウスメーカーといえるほど大きく展開し、年間百棟以上建設している会社もあれば、社員数名の家族経営の小さな会社もあります。
ハウスメーカーとは違い、対応しているエリアは狭く、地域に密着したタイプの会社です。
三つ目の設計事務所ですが、これは上記の二つとは少し趣が異なります。
設計事務所には何人かの建築士が所属しており、住宅の設計部分を担います。実際の工事は設計事務所が依頼した工務店が行います。
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ハウスメーカーの特徴
ハウスメーカーを選ぶメリットは、安心・安全であること。
デメリットは、価格が高くなりやすいこと、自由度が低いことです。
ハウスメーカーは会社の規模が大きく、毎年多くの注文住宅を手がけています。ハウスメーカーの規模の大きさやビジネスモデルにより、安心感や高い安全性を期待できます。
多少高くても安心・安全な住宅を求めているのであれば、ハウスメーカーがおすすめです。
ハウスメーカーでは、効率化のために建材や部品などを工場でまとめて生産し、使用しています。
工場生産を行うことで、工事期間を短縮し、仕入れにかかるコストを抑えられます。また、工場で品質管理を行い、現場での工事負担を減らすことで、工事担当者の腕に左右されない高品質な施工が可能となっています。
家づくりのためのサポートも充実しています。
年間の建築棟数が多ければ多いほど、経験や実績が豊富となるため、要望に対する提案力も期待できます。
住宅購入のための手続きや資金管理に関するセミナーや相談会も開催しているため、安心して家づくりを進めることができます。
入居後のアフターサービスについても、ハウスメーカーの優れている部分です。
「家を持つ」ことは入居でゴールではありません。その後もメンテナンスを続けなければ、快適な住空間をキープすることはできません。
長い間メンテナンスやアフターサービスを利用するには、経営が安定している大手の方が有利です。
また、知名度が高い分利用者も多く、体験談などの情報収集もしやすいです。
ハウスメーカーの欠点としては、規格に合わない住宅は建てにくいということです。
部品を工場で大量生産することで、品質を保ったり、コストを抑えたりしているため、工場を活用できないような住宅は苦手です。個性の強いこだわりの一軒家や、変形地の住宅には向きません。
価格が高くなりやすいのもネックです。
工務店とは違い、宣伝費用や研究開発に多額の費用をかけているため、地元の工務店などと比較するとやや高い傾向にあります。
また、標準仕様から変更したり、オプションをつけたりすると、急に価格が跳ね上がってしまいやすいです。
工務店の特徴
工務店の長所は、自由度が高いことと、値段を抑えやすいこと。
短所は、小規模ゆえの不安定さと情報収集の難しさです。
工務店と言っても、手がける内容は様々です。
注文住宅を主に扱う所もあれば、リフォーム中心のところ、下請けがメインの場合など色々あります。
注文住宅を中心に取り扱っている工務店でも、設計から施工まで行う小規模ハウスメーカーのような工務店から、棟梁と職人さんで構成された大工集団で、施工のみを扱っているところまで幅広くあります。中には、外部の設計士に設計を依頼し、設計に力を入れていることをアピールしている工務店もあります。
得意な住宅の種類も工務店毎に異なり、木造建築や洋風など、工務店ごとのカラーが強いです。
ハウスメーカーとは異なり、工場の規格に縛られない家づくりが可能です。こだわりの家づくりや一風変わった住宅も実現可能です。狭い土地や変形地の住宅はハウスメーカーでは対応が難しいこともありますが、工務店であれば柔軟な対応が期待できます。
工務店の規模の小ささもメリットとなり得ます。
展開している地域が狭い分、その地域の情報について精通している可能性が高いです。
地域の習慣や交通事情、季節ごとの特徴などに応じた対応など、ハウスメーカーでは難しい気配りも可能です。
広告などにかける費用が少ない分、価格も安くなりやすいのも利点です。低価格路線のハウスメーカーでも安くしやすいですが、工務店は規格に縛られない分、標準仕様から外れても高くなりにくいです。
工務店の欠点としては、やはり規模の小ささです。
現在の経営が安定している工務店でも、十年後、数十年後までのアフターサービスを期待するにはやや不安があります。
ハウスメーカーとは違い、現場での作業や加工が多くなるため、工事に時間がかかりやすいです。工事の難易度も上がるため、品質も不安定になりやすいです。
年間数百棟、数千棟建てる大手と比較すると経験も実績も少なく、提案力にかける工務店もあります。
また、情報収集の難易度も高く、工務店選びが難しいことも挙げられます。
広告が少なく、住宅展示場に出展もしていません。展開地域が狭く、取り扱う棟数が少ないため、体験談などの情報も集めにくいです。
工務店で家づくりを行う場合は、ハウスメーカーの時よりも積極的な情報収集が求められます。
設計事務所の特徴
設計事務所の長所は設計力の高さと柔軟性です。
短所は、時間と費用がかかることです。
設計を専門にしている会社だけあり、設計力はピカイチです。提案力も高く、要望に対して的確に応えてくれるはずです。個性豊かな住宅だけでなく、狭小住宅や変形地の住宅でも、土地の特性を最大限に活かした家づくりができます。
規格や仕様に制限されることもなく、自由な家づくりができます。
品質管理の点でも設計事務所は優れています。
施工は設計事務所が依頼した工務店が行いますが、施工管理は設計事務所が担当します。施工会社と管理会社が別になるため、信頼度も高いです。
デメリットとしては、やはり価格です。
設計事務所には設計料の他に監理料も払うことになります。工務店やハウスメーカーが設計から施工まで一括で行うのに比べると、どうしても費用がかさみます。
また、設計事務所に依頼する住宅はこだわりの住宅が多くなります。建具や金具が特注品になったり、特殊な加工や工事が必要となったりします。材料費や工事費が高くなるだけでなく、工事に時間の係る分、人件費もかかります。
費用の目安が分かりにくいのも欠点です。
ハウスメーカーや工務店であれば、標準プランでだいたいこの程度、とあらかじめある程度の金額が予想できます。しかし、設計事務所に依頼する場合はゼロからのスタートとなるため、どこの設計事務所に依頼すれば安くなるか、などの比較ができません。
ただ、設計の自由度が高いということは、価格のコントロールもしやすいということでもあります。こだわりの一軒を建てるためには、高くなるのはやむを得ないと思っているかもしれませんが、工夫次第では価格を抑えることもできます。
重要視する部分と、削ってもいい部分をしっかりと分けて考えることで、コストの削減ができます。
どこを選ぶのが良い?
今回挙げた三つの他にも、注文住宅を扱う会社はあります。
例えば、フランチャイズ方式のハウスメーカーです。
開発と材料の仕入れは一括で行う一方で、現地での施工は加盟工務店が行います。まとめて仕入れることでコストダウンをはかりつつ、工務店の強みである地元密着も活かした、いいとこ取りの形態です。
どこに依頼するにしろ、それぞれの強みや弱みを把握することが大切です。
同じ予算を重視する場合でも、規格に沿った住宅であればハウスメーカーが優れていますが、予定地が狭小地であったり、変形地だったりする場合は工務店の方が向いています。
住宅に対して求めていることや重視していることとマッチしていて、理想とする住宅を実現できそうだと思う依頼先を探しましょう。
知名度や会社の規模も長所に繋がる部分であるため、判断基準の一つにはなりますが、それだけを見て依頼先を決めるのは危険です。