マイホーム購入の最後の難関として立ちはだかるのが住宅ローンの審査です。
数千万円にもなる住宅を購入するためには銀行からの融資がかかせません。
家を買いたいと考えていても、収入や返済に不安があり、審査に通るかどうか分からずそこで立ち止まってしまっている人は非常に多いです。また、自分では返済の目処が立っていても、自営業やフリーランスのため審査に通過できるか不安だという人もいるでしょう。
住宅ローンに限らず、ローンの審査は同じ内容で何度も受けているとどんどん不利になりやすい傾向にあります。そのため、できるだけ少ない回数で審査に通過できるよう、事前にしっかり準備をして挑むことが重要です。
今回は、住宅ローンの審査ではどんなところをチェックされるのか、どんな対策をしたらよいのか、万が一落ちてしまった時はどうしたらよいかなどを解説していきます。
事前審査と本審査がある
住宅ローンでは、事前審査と本審査の二回に分けて審査が行われます。借入金額が大きく、返済期間も非常に長いため念入りに行われるのです。審査にかかる時間もトータルで数週間から1ヶ月程度と長いため、余裕を持って申し込みましょう。
さて、本審査に挑むためは事前審査に通過していなければなりません。なにはともあれ事前審査の突破を目標に対策を練る必要があります。
事前審査でチェックされるのは、申込者の年齢、年収、職業、信用情報、他の借入状況などです。細かい部分は金融機関によって微妙に違いますがこの5点は基本的にどこの金融機関でも確認されます。
事前審査にかかるのは数日から1週間ほど。
提出書類については、自己申告でOKなところもあれば、申告した情報について証明する書類が必要なところもあります。必要な場合、申込書の他、本人確認書類、購入する家の資料、源泉徴収票、印鑑などが求められます。急ぎの場合が準備に時間のかかるものがある場合は前もって準備しておきましょう。
事前審査に通過すれば本審査に挑戦できます。
本審査では事前審査でチェックした内容をもう一度確認し、内容に差異がないかなど厳しく確認していきます。担保となる購入物件についても融資の条件を満たしているか確認が入ります。
審査にかかる時間は1週間から1ヶ月ほど。事前審査にすんなり通過できても、本審査に必ず通過できるとは限りません。油断せずいきましょう。
事前審査で注意すべきポイントは?
では、事前審査でチェックされる項目や落とされやすい原因についてもう少し細かく見ていきましょう。
●収入
最も重要なのはやはり収入です。
住宅ローンの審査では一定以上の収入と、安定して返済を続けられる継続力が求められます。
具体的な金額は公表されていませんが、金融機関ごとに年収の最低金額が決まっており、それを満たしていないとどんなに他の部分が良くても通れないと言われています。目安は年収300万円。400万円あればひとまず大丈夫です。
ただし、収入が多くても借入金額が大きすぎるとNGになります。収入の大きさだけでなく、借入額とのバランスも大切です。
●職業
収入が安定していて、職を失う心配の少ない公務員は審査に通過しやすいです。同じ会社員でも小さな会社よりは大企業の方が有利になりやすいです。
反対に、契約社員や派遣社員、自営業、アルバイトなどは収入が少なく、安定性にもかけているケースが多いため、審査では不利になります。
●自営業
自営業の場合、収入のボーダーラインは会社勤めよりも高くなります。
特に節税のために所得を少なく申告している場合は注意が必要です。生活に余裕があっても、住宅ローンの審査で見られるのは所得額の部分。同じぐらいの収入・生活レベルの会社員は審査に通過しているのに、自営業の自分は通れないというのは決して珍しい話ではありません。
また、事業を起こしたばかりという場合も不利になりやすいです。自営業の場合、申込時に3年分の確定申告書類の提出が求められます。提出できるのが3年分に満たない場合、審査通過は非常に厳しいでしょう。
●勤続年数
勤続年数は収入の安定性を測るためにチェックされる項目です。
最近では1年あれば大丈夫という金融機関が増えているものの、できれば2年から3年は欲しいです。
住宅ローンを組んだ後なら転職しても審査上何の問題もありません。転職を考えているならタイミングを遅らせるのが無難です。
●年齢
返済が長期に渡る住宅ローンでは年齢も重視されるポイントです。
注目すべきは完済時の年齢。基本的に定年を迎えるまでに完済するように組むことになります。収入や他の状況によっては40歳で35年ローン(75歳で完済)を組むこともできますが、定年退職を迎えた後、年金で生活しながら住宅ローンの返済を続けるのは大変です。
●信用情報
一見分かりにくい信用情報の問題ですが、他に心当たりがないにもかかわらずローンの審査に落ちてしまったという場合、原因はほぼ信用情報にあります。
信用情報とは、クレジットカードやローンの借入・返済状況をまとめた情報のこと。いくつかの信用情報機関がそれぞれそうした記録を保持しており、ローン審査時に参照されています。
過去に返済の遅れがあった場合は注意が必要です。
「お金を借りたことないから大丈夫!」と油断してはいけません。スマートフォンの端末代金を月々の利用料に上乗せして分割払いしている人は多いと思いますが、実はこれもローンの一種。審査が非常に簡単な上に、支払いも携帯電話料金と一緒に行われているため、意識していない人がほとんどです。この場合、携帯電話料金支払いの遅れはそのまま返済の遅れとしてカウントされ、信用情報にも残ります。
特に60日以上の遅延経験がある場合は要注意です。一定期間を遅れると信用情報に「異動」と記録されてしまうのですが、この「異動」がある信用情報ではローンの審査にまず通過できません。
1000円前後で申し込めます。ローンの審査前に一度チェックしておくのもよいでしょう。
●他社からの借入状況と返済負担率
信用情報には、現在の借入状況も載っています。車など既に他のローンを組んでいたり、キャッシングの借り入れがあったりする場合にはその金額や件数もローンの審査に影響します。
ローンを組む会社は別々でも、支払う財布は一つですから、収入に対して返済がどれぐらいを締めているかが審査の可否を見極めるポイントになります。
収入のうち返済がどのぐらいを締めているかの割合を「返済負担率」と呼び、金融機関ごとにそれぞれ基準が設けられています。
ただし、基準内でもキャッシングなどの借入件数が多い場合は不利になります。
ローンやキャッシングの審査は金額が大きくなるほど厳しくなります。同じ金額を借りる場合でも、収入や返済能力に不安があり、厳しい審査に通過できない人は借入先を分散しなければ借りられません。
そのため、借入件数が多ければ多いほどお金に困っているように見えてしまうのです。
ちなみに、クレジットカードのリボ払いや分割払いもローンの一種です。これらの数も住宅ローン審査に影響します。
●健康状態
住宅ローンを組むために「団体信用生命保険(団信)」への加入が必須の金融機関もあります。
団体信用生命保険は、住宅ローンの契約者が重大な病気・怪我をしたり亡くなったりしてしまった場合に備えるための保険です。審査時点で保険の加入が難しい健康状態の場合、団信に加入できず、住宅ローンも組めません。
●その他のポイント
金融機関によっては運転免許証の紛失回数を審査項目に加えているところもあります。落し物が多いうっかりさんは気をつけましょう。
他にも、クレジットカードの枚数がチェックされることもあります。複数枚持っているのは普通ですが、あまり多すぎるのはよく思われません。というのも、クレジットカードにはキャッシング枠がついているものが多いためです。キャッシング枠のためにクレジットカードをたくさん持っていると思われないよう、これを機会に整理をしてみるのはいかがでしょうか?
住宅ローンの事前審査のためにしておくべきことは?
●信用情報に気をつける
今何か返済中のローンがあるなら期日までにきちんと返しましょう。資金に余裕があるなら繰り上げ返済を行い、借入額を減らしておくのも良いでしょう。
今あるローンを減らすのも大切ですが、住宅ローンの他には増やさないということも大切です。車など大きな買い物をする予定があるなら家のローンを組んだ後にしましょう。家を買うとなると、住宅そのものの代金以外にも、引っ越し代や家具家電の購入費など他にも色々お金がかかります。一括で購入できないようなものは一旦我慢し、節約しましょう。
携帯電話料金の支払いを振り込みにしているなら、この機会に引き落としに変更していくと支払い忘れがなくなり、知らない間に信用情報に傷をつけてしまうこともなくなります。
●転職のタイミングはずらす
転職を検討、予定している場合はローンの審査が終わってからにしましょう。転職したてはローンの審査で非常に不利です。
既に転職してしまったという場合は、住宅の購入を1年ほどずらすのをおすすめします。
住宅ローンの審査に落ちてしまった時は?
ローンの審査では必ず信用情報を確認しますが、信用情報には審査のために信用情報を参照した記録も残されます。そのため短期間に何度も審査を受けて何度も落ちている記録が残っていると、その記録だけでどんどん審査に通過できなくなってしまいます。
しかし、一度ローンに落ちたからと言って絶対に通過できなくなるわけではありません。何が問題だったか原因を考え、対策を行えばチャンスはあります。
●信用情報が原因の場合
延滞などの記録が信用情報にあり、それが原因で審査に通過できていない可能性が高い場合はどうしたらよいのでしょうか?
答えは簡単。待つだけです。
信用情報に載っている情報は一生残るものではありません。内容にもよりますが、基本的に返済完了から5年経てばその情報は消えてしまいます。
過去に携帯電話料金の滞納をしてしまったという人でも、時間が十分に経っていれば審査でも分かりません。
●年収が足りない場合
年収が心もとなく審査で不利に働いていると感じるなら、夫婦で収入を合算するのも方法です。共働きなら申込時の収入がぐっと増えるため、一気に有利になります。どちらかがパートやアルバイトだという場合でも、収入を合算するのとしないのでは全く違います。
●団信に加入できない場合
持病などが原因で団信に加入できないという人は、フラット35を検討してみましょう。
フラット35は住宅支援機構(国交省と財務省管轄の独立行政法人)と金融機関による長期固定金利の住宅ローンです。団信が必須でないだけでなく、勤続年数も考慮されないため転職したてという人にもおすすめです。
●借入金額を減らす
住宅ローンの金額そのものを減らしてしまうのも効果的です。確実に審査のハードルが下がります。
頭金を増やせば借入額を減らしローンに通過しやすくなることに加え、毎月の返済額や利息の支払いも少なくなるため家計のやりくりも楽になります。
最後の手段ではありますが、購入する住宅そのものの計画を見直し、もっと安い家にすることも検討してみてもいいでしょう。金融機関が融資NGを出すということは、第三者からは無理のあるローンに見えるということでもあります。
大切なのは高い家を買うことではなく、新しい住まいで快適な暮らしをすることです。本当に無理のない返済金額かどうか今一度考えてみましょう。
●自営業の場合は確定申告の修正も視野に
節税のために確定申告で少なめの収入にしていたという場合は、修正申告を行い、収入を多く見せるという方法もあります。ただしこの場合、追加徴収が発生します。まずは頭金を増やすなどして借入金額を減らす方向で検討するのがおすすめです。
●年齢の場合は親子リレーローンも検討
完済時の年齢が問題でローンが組めそうもないと言う場合には、「親子リレーローン」という仕組みがあります。その名の通り、親のローンを子どもが引き継ぐという契約の住宅ローンです。
親子リレーローンにすれば、年齢を理由に審査で落とされることはなくなるでしょう。
ただし、親子リレーローンは子どもに借金を継がせるローンです。便利ですがトラブルや後悔も多いです。
住宅の価値は年を経るごとにどんどん下がっていきます。そうした物件に対して、子ども側が納得して返済を続けていけるのかどうか、事前によく話し合っておきましょう。
●タイミングによって審査難易度が変わる
経済状況や銀行の方針によって審査の難易度が変わることもあります。
以前厳しいと言われていた金融機関が方針転換で通過しやすくなったり、反対に条件が急に厳しくなったりすることも。
このあたりは素人では分からないため、住宅ローンに詳しい専門家と相談してみるしかありません。
事前準備をしておけばローンの審査は怖くない
住宅ローンの審査では年収や職業、信用情報など、様々な項目をチェックします。たとえ審査に落ちてしまっても理由は教えてくれないため、一件ブラックボックスのように思えてしまいます。
しかし、金融機関によって多少の差はあれ、基本的に見られる項目は決まっています。よく見られる項目を自分に当てはめて一つひとつチェックし、怪しいところを潰していけば住宅ローンの審査に合格することは難しくありません。
また、様々な項目を総合的に判断するため、一つの項目でギリギリアウトでも、他の部分が基準より大きく勝っていれば審査に通過できます。
自分が審査に通過できそうかどうかは、ハウスメーカーや不動産会社などの担当者に相談するのが一番です。住宅ローンを組んでもらわなければ家は売れませんから、うまく審査に通過できるよう様々なアドバイスがもらえるはずです。